MENU
今久保 隆博
Asian LABO代表
奈良県出身のサッカーの指導者。24歳から20年間名古屋グランパスエイトで、育成年代からトップチームまで全てのカテゴリーの指導を経験。独立後はフリーランスとして活動し、日本と中国でクラブ運営、指導者育成に携わる。2019年にAsianLABOを愛知県岡崎市に設立。2020年よりスクール運営やイベント企画など、青少年育成事業、社会教育活動を本格的に開始。

サイレントリーグU10【龍北総合運動場】

たった3つの、シンプルな大会の約束です。

  • 準備や片付けをすべて自分たちで行います。
  • ウォーミングアップ・選手交代も自分たちで行います。
  • 指導者は一切口出ししません。

1月16日(日) 第2回サイレントリーグU10。子どもたちの行動を観察するなかで、今回もっとも印象にのこった「決断の早さ」についてお伝えします。

小学4年生、約120人が集まったサッカー大会。冷え込んだ朝でしが、日中は晴天。春の陽気のようなグランドでサイレントリーグが行われました。

目次

サイレントリーグU10【龍北総合運動場】

この大会は、いつも発見があります。そう多くの指導者が話してくれます。

参加クラブの担当コーチは「やっぱり、子どもたちが自主的に楽しんで試合をすると、発見も多いし試合内容も良いですね」と話してました。

今回は、少し違った角度から、子どもたちのミーティング風景を分析し、子どもたちの決断について考えてみました。

ミーティングでの決断スピード

ミーティングでは、みんなが口々に話し、話す内容にまとまりがありません。

でも、よく聞いてみると誰かが何か言った直後に、われ先にと、自分の思うことを伝えようと話しはじめます。

そうこうしているうちに、集団をまとめるリーダーが出てきて、ミーティングを先導しはじめます。

リーダーの出現で、子どもたちの話す内容に方向性がみえはじめ、議論がまとまりはじめます。でもリーダーを含め、子どもたちの考えることは、まだまだ不確かです。感覚的に状況を評価し決断するので、失敗となることが多いです。ここは、リーダーやメンバーの経験値・情報の量で決断の正確さに違いが出ます。

まとまり始めると、「よし!じゃあそうしよう」とか「〇〇はこのポジションでこうやって」とか「そうなった時は、こうしようよ」など、いろんな声があがります。

ここでふと気づいたのですが、次にとるべき行動を決断するまでが早いです。

何かを決める時に、手を上げて「はい次、はい次」という、学校で先生が指名して答えるのとはぜんぜん違います。とにかく意見をぶつけ合って、みんなで決めていくのが、サイレントリーグのミーティングの風景で、ベンチでの議論が高速回転するんです。

そして、リーダーが最終的に決断して、アクションにつなげていくという流れですね。決断までのスピードとプロセスは大人顔負けです。

日本人のウィークポイント

外国人は決断が早く、すぐに行動します。また、責任ある仕事をしたいと、自分で求めてくることが多いです。

これは、外国人の選手、コーチ、その他の仲間とのつき合いで、僕が得た印象ですが、日本人はこの部分で遅れをとっています。僕もそうです。

とにかく時間がかかる。決断まで根気よく待つ必要があるのが、私たちの身の回りの環境です。そして責任をとることにとても臆病です。

この決断までに要する時間が長いということは、普段の生活で感じることはないでしょう。しかし、実際に日本人はかなり遅いです。アジアの国々や、世界と比較しても。

教え込み型の指導

考える力が弱いのは日本の教育の問題だ!というサッカーの指導者もいます。ぶっちゃけ、そう言う指導者も教え込み型の指導で、考えることをさせない指導をしています。

僕たちの世代は教え込まれてきました。勉強でもスポーツでもそうでした。考えるために与えられた自由度は低く、言われたこと以外の行動や発言は、はみ出し者扱いを受けることもありました(たぶん今も)。

教え込み型は、日本全国に浸透している指導方法であることは間違いないでしょう。

だからといって、日本人は考える力が弱いとは言い切れませんが、なにかしらの原因はこの教え込み型の指導にあるはずです。

決断のすゝめ

僕たちが伝えようとしている真意は、本当に子どもへ伝わっているのでしょうか?

今回のサイレントリーグで、あらためて指導の難しさを感じました。

僕たち指導者が多くを伝え、達成できたとしても、もしかしたら瞬間的な、一時的な成功かもしれないという認識をもつべきです。

「子どもたちに考えさせる指導」は重要です。でも、子どもにも指導者にも、時間をかけて試行錯誤する余裕がないことも事実でしょう。だからといって、子どもが認知できていない膨大な量の情報を与え、時間がない状況の中で、考えることを求めても不可能です。その先の成長を期待することもできません。

失敗を経験し、周りとの関係を構築していくことも、子ども自身がすべきとても重要な作業のはずです。自分ごととして決断をくり返し、たくさんのシーンを経験させることで、マインドセットは磨かれていくんです。

今回のサイレントリーグで、子どもたちの決断の早さ、決断の量の多さを見せつけられました。しかも大人でも真似できないようなスピードです。

子どもたちの能力を引き上げるために、決断を任せる部分をもっと提供することができれば、日本人のストロングポイントが磨かれていくはずです。

これからの時代、ちょっとした指導者のマインドセットを変えていく必要があることを、今回のサイレントリーグで教えられた気がします。


今回のサイレントリーグへご参加いただいたクラブ、少年団の指導者の方々、選手、保護者のみなさまへ心よりお礼申し上げます。

みなさまとまたお会いできる日を楽しみにしています。


サイレントリーグの視察にお越しいただいた青山周平衆議院議員ありがとうございました。

今大会の協賛ならびに企画運営にご協力いただいた、愛知県宅建協会西三河支部の皆様へ心よりお礼申し上げます。


子どもたちのベンチでの様子は、Asian LABO Instagram公式アカウントでご覧ください。

この記事を書いた人

奈良県出身のサッカーの指導者。24歳から20年間名古屋グランパスエイトで、育成年代からトップチームまで全てのカテゴリーの指導を経験。独立後はフリーランスとして活動し、日本と中国でクラブ運営、指導者育成に携わる。2019年にAsianLABOを愛知県岡崎市に設立。2020年よりスクール運営やイベント企画など、青少年育成事業、社会教育活動を本格的に開始。

目次
閉じる